2024 年 7月 27日 (土)
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カカオのキム・ボムスの初心

 コラム 

MONEYTODAY未来産業部 イム・サンヨン部長

国会で証人宣誓をするキム・ボムス氏(共同取材)©MONEYTODAY

「世の中を少しでも住みやすい場所にしておいて去ること、これが本当の成功だと思う」

カカオ未来イニシアティブセンター長のキム・ボムス氏は2011年10月、MONEYTODAYとのインタビューで、メッセンジャーサービス「カカオトーク」を始めた理由をこのように明らかにした。カカオトークを披露してから20カ月も経っていない時点だ。当時、カカオトークは加入者2500万人を超え、早くから「国民メッセンジャー」として位置づけられた。

キム・ボムス氏にとってカカオトークは、単なる金儲けの手段ではない。新しい道だった。

サムスンSDSでPC通信「ユニテル」を作り、好調だった会社を出て「ハンゲーム」を設立し、ネイバーと合併後、NHN共同代表に上がるなど他人より一歩進んだ試みで勢いに乗っていた。そんなキム・ボムス氏は2007年8月、代表職を投げて、忽然と家族がいる米国に向かった。

成功とは何か、根本的な質問に包まれた時だ。

キム・ボムス氏は「お金をたくさん稼ぐことが成功だと定義してしまい、走ってきたようだった」と話した。莫大な成功を収めたが、道に迷った彼には休息が必要だった。そのように2年余りを自分と自分が失った何かを探すのに時間を過ごしたという。

キム・ボムス氏が長い時間、内面を覗きながら探した価値は「より良い世の中」だった。

「若者の誰もが夢を広げ、皆が一緒に食べていける」という、より良い世の中に進むことができるプラットフォームを作ること、カカオトークはそのように始まった。

当時、キム・ボムス氏はカカオトークを通じて作りたい世の中をこのように説明した。

「これまで“規模の経済”では、財閥でもメディアでもポータルでも独占して並べるのが夢の境地だったじゃないですか。でも、新しい実験が成功したんです。アップルが作った生態系で35万個のアプリが活動しています。みんなで食べていく仕組みが可能になったのです。カカオトークも恩恵を受けました。私が本当にやりたいことは、若い子たちが大手を振ってくれるプラットフォームを作ってあげることです」

路地商圏侵害、分割上場、手数料横暴などカカオを巡る論難が大きくなるたびに、真っ先に浮かび上がったのが、11年前のキム・ボムス氏のこの言葉だ。

果たしてカカオはキム・ボムス氏が作ろうとした「より良い世の中のためのプラットフォーム」として成長しているのだろうか。

カカオが国民便益を高め、IT・創業生態系に寄与したのは事実だ。今も多くの若者が「第2のカカオ」を夢見て新しい挑戦に乗り出す。この中にはカカオに会社を売却し、カカオに合流することを目標に創業に乗り出した場合も多い。カカオのM&A(買収・合併)で「敵対的」という修飾語を探すのが難しい理由だ。

©MONEYTODAY

しかし、今回のカカオの不通事態は、より良い世の中のためのプラットフォームというには「不十分なカカオの素顔」を如実に見せてくれた。

国民10人のうち9人が利用するメッセンジャーを運営しながらも、二重化システムと危機対応体系をきちんと備えておらず、国民の日常を止めた。成長だけに汲々とし、ビッグテック(大型IT企業)の基本であり、責務を疎かにしたのだ。

事態の責任を負って辞任したナムグン・フン代表は「売り上げや営業利益を中心にすべての思考が回っていた」と一歩遅れた反省をした。さらに「タダだから対応しない。誰がカカオを使えと言った?(自分たちが)日常をオールインしたのが問題」といった、 事態収拾の渦中で溢れ出たカカオ一部職員の発言は組織文化まで成果至上主義に埋没したのではないかと疑わせた。

カカオの経営や組織文化ともにキム・ボムス氏の初心と食い違っているという印象がぬぐえない。

今回の事態は単純に謝罪し、補償で終わらせることではない。キム・ボムス氏自ら初心を振り返り、組織内部を覗き見る契機にしなければならない。共和国、独寡占、タコ足など否定的な声が大きくなる理由を省察すべきだ。必要であれば、直接乗り出して患部を切り取ることも拒んではならない。「カカオはお金だけを追うただの企業」として国民の頭の中に刻印されないためには。

©MONEYTODAY

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