ソウル市松坡(ソンパ)区に住むイさんは(36)は今月、多用途調理器具「ビスポークキューカー」を購入した。似たような性能を備えた他の製品より高価だが、電子レンジやエアフライヤーなど多様な機能とすっきりとしたデザインに魅せられた。一人暮らしでよく食べるミールキットや軽食を簡単に調理できるという点も一役買った。イさんは「センスのある製品なら価格が高くても購買をためらわない」と話している。
◇洗練されたデザインと差別化された性能
家電業界が、若年1~2人世帯を狙ったプレミアム家電製品を相次いで披露している。
洗練されたデザインと差別化された性能を備え、同級の製品より価格が高いが、個性を重視する若年層の特性を考慮した。業界はMZ世代の「ミーニングアウト」(価格外要素を通じて個性を表すこと)消費で家電不況を克服するという戦略だ。
家電業界と行政安全省が今月15日に明らかにしたところによると、今年8月現在、1~2人世帯は1544万8796世帯で、全体世帯数(2372万4829世帯)の65.11%と過半数を占めた。伝統的な世帯形態である3~4人世帯(729万1050世帯)の2倍を超える数値で、比重が増え、市場で購買力を備えた核心階層に浮上した。
LG電子は1~2人世帯が好む低容量・小型製品を相次いで披露している。今月2日に開かれた欧州最大の家電展示会「IFA2022」で1~3人世帯が個別空間で使える小型の空気清浄機「フューリーケアエアロパニチャー」を公開した。今年8月には大型製品より100ミリ、奥行き170ミリ減らした「トロンウォッシュタワーコンパクト」を発売し、4月にも344リットル容量の「モダンエッジ冷蔵庫オブジェコレクション」を公開した。
サムスン電子はすっきりしたデザインと、さまざまな機能を備えた製品で1~2人世帯の心をとらえた。「ビスポークキューカー」は電子レンジ・グリル・エアフライヤー・トースター機能をすべて盛り込んだ「4-in-1」調理機器で、「おうちご飯」を素早く簡単に作ることができる。小型冷蔵庫のビフォークキューブは若年層の好みに合わせてワインとビールを最適化された温度で保管でき、振動と騒音が少なく狭い空間配置も簡単だ。
◇「価心比」
これらの製品の共通点は同クラスの製品に比べて価格が高いという点だ。LG電子のトロンウォッシュタワーコンパクトは出荷価格基準オブジェコレクション製品269万ウォン、ホワイト製品249万ウォンで、似たような容量の他の製品に比べて高価だ。サムスン電子のビスポークキューカー出庫価格は59万ウォンで、類似性能の製品より2倍近く価格が高い。
しかし、MZ世代1~2人世帯は価格に関係なく満足度に伴う購買傾向が強い。6月の家電輸出額は前年より15.5%も減少したが、同月のビスポークキューカーは累積販売台数10万台を突破した。家電不況にも需要減少が大きくなかったという意味で、大韓商工会議所によると、MZ世代380人中46.6%が「価心比」(買い物の際、高価でも心理的な満足を優先する)を消費の核心キーワードに挙げたほど「コスパ消費」は昔話になった。
業界関係者は「大型家電は必須ではないので最近の不況で需要が減少している。だが、1~2人用家電を購入する消費者は、景気の影響は相対的に少ない。プレミアム化で収益性を高めた中小型家電発売が増えるだろう」と展望している。
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