2024 年 7月 27日 (土)
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「韓国版イーロン・マスク」はなぜ没落したか (下)

クォン代表Twitterアカウント(Twitterキャプチャー)©MONEYTODAY

韓国ブロックチェーン企業「テラフォーム・ラブズ(Terraform Labs)」のクォン・ドヒョン最高経営者(CEO)は、韓国とテラフォーム・ラボ本社のあるシンガポールを行き来しながら働いているという。「ドクォン(DoKwon)」というクォン氏のIDのTwitterアカウントフォロワーは60万人以上だ。暗号資産の財閥になったクォン代表は「ルナティック(Lunatic)」と呼ばれる投資家とSNSを活用して積極的にコミュニケーションを図った。

このような姿が、世界最大の金持ちである米テスラのイーロン・マスクCEOに似ているということから「韓国版マスク」と呼ばれたりもした。

2日、ソウル市瑞草区「ビッサム」顧客センターの電光掲示板©news1

◇流動性がなくなり崩れたアルゴリズム

昨年9月、米証券取引委員会(SEC)との訴訟にからんで、クォン代表はさらに有名になった。SECがテラフォーム・ラブズのサービスが一種の未登録証券だとして呼出状を発行したが、クォン代表は「この呼出状は適法に通知されたものではない」と堂々、法廷闘争を始めた。

クォン代表の没落まで長くはかからなかった。

実物資産を担保とする一般的なステーブルコインとは異なり、ルナとテラ間の取引アルゴリズムがすべてであるこの暗号資産は、発行初期から「ポンジ・スキーム詐欺(新規投資家の資金で既存投資家への利子や配当金を支払う方法)」や「マルチ商法」として批判されてきた。

暗号資産の上昇期にはこのアルゴリズムに何の問題もなかった。だが最近、市場が冷え込んだことでシステムが機能しなくなった。1テラが1ドル以下に下がると、クォン代表が率いるテラフォーム・ラブズはルナを大量に発行した。ルナでテラを買い入れて流通量を減らす方法でテラ価格を上げようとする算段だった。だが、ルナ価値が通貨量増加に耐えられず暴落し、投資家がテラとルナを同時に投売りする「バンクラン(取り付け騒ぎ)」事態につながった。いわゆる「死の渦(deathspiral)」効果が現れたのだ。

ルナに投資して大きな損失を被ったと推定されるあるネットユーザーの口座(写真=オンラインコミュニティキャプチャー)©MONEYTODAY

世界最大の暗号資産取引所は、2日間で99%以上暴落したルナの上場廃止を決めた。相場が回復する可能性に望みを抱いていた投資家はパニック状態に陥った。YouTubeやSNSなどには、ルナコイン投資に失敗したという書き込みが溢れ、投資家らが号泣する姿がそのまま投稿された。

クォン代表に対する主要海外メディアの評価は完全に変わった。その中心にあるのが、クォン代表が設計したアルゴリズムが「一種の詐欺だった」という批判だ。

英国のある経済学者が昨年7月、アルゴリズムのステーブルコインモデルは失敗する、という可能性を指摘すると、クォン代表は「私は貧乏人とは討論しない」と発言して批判されたというエピソードもある。

暗号資産専門メディア「コインデスク」のデビッド・モリス首席コラムニストは「クォン代表は、ルナの暴落事態で訴訟と刑事告発を免れないだろう」とみている。

©MONEYTODAY

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