2024 年 7月 27日 (土)
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「新堂駅殺人犯」は、なぜもっと早く拘束されなかったのか

 コラム 

news1 イ・スンファン記者

15日午後、病院での治療を終えて護送される新堂駅殺人事件の容疑者©news1

韓国では裁判所や捜査機関が被疑者拘束の必要性を判断する際、3つの要件を検討する。

証拠隠滅の恐れがあるか、逃亡の恐れがあるか、住むところがあるか。これらは刑事訴訟法70条1項に規定されている。

だが、同条2項には犯罪の重大性、再犯の危険性、被害者および重要参考人に危害を加える恐れなどを「考慮」しなければならないと明示されている。2007年に新設されたこの条項は、文字通り「考慮しなければならない事項」に過ぎず、拘束の直接的な理由にはならない。

ソウル・新堂(シンダン)駅ストーカー殺人事件のチョン・ジュファン容疑者(31)に刑事訴訟法70条2項は適用されなかったものとみられる。

チョン容疑者は昨年10月7日、カメラなどを利用した撮影と撮影物を使った脅迫などの疑いで、緊急逮捕された前歴がある。警察は当時、チョン容疑者の拘束令状を申請したが、裁判所は令状を棄却した。裁判所は「住居地が一定しており、証拠隠滅及び逃亡の恐れがない」という理由を掲げた。

チョン容疑者はその後も「ストーカー犯罪の処罰等に関する法律」(ストーカー処罰法)で告訴され、警察の捜査を受けた。警察はチョン容疑者の嫌疑を認定し、今年1月に検察に送致した。

しかし2回目の捜査の際、警察は拘束令状を申請しなかった。警察は「チョン容疑者の状況に変わったものがなかった」と理由を明らかにしている。裁判所が昨年、令状を棄却した時のように、拘束事由に該当しない、という判断だった。

裁判所はもちろん、警察が「再犯の危険性」と「被害者への危害の恐れ」などの考慮事項を深く調べたのか疑わしい。

ストーカー処罰法で送検された後もチョン容疑者は綿密に犯行を計画した。

チョン容疑者は今月14日、自宅から凶器を持ち出し、被害者Aさん(28)が以前住んでいた地下鉄6号線亀山(クサン)駅まで移動し、Aさんを待ち伏せしていた。チョン容疑者は会社の内部情報に接続し、被害者の勤務地も突き止めていた。

同日午後9時、Aさんは新堂駅の女子トイレでチョン容疑者に襲われ、死亡した。性犯罪とストーカー処罰法違反容疑でAさんに告訴されたことに対する報復だった。

事件の波紋が広がると、法務省と警察はストーカー処罰法の補完に着手した。

法務省は、被害者が処罰を望まない場合は起訴できない「反意思不罰罪」と規定されたストーカー処罰法の改正を推し進めている。警察は全国のストーカー事件を全数調査し、検察・警察協議体を立ち上げて対応する方針だ。

一方、警察内部では法に規定された拘束事由から手を加えるべきだという声が出ている。つまり、刑事訴訟法70条1項は1995年12月に改正されたものであり、27年が過ぎた今もそのまま適用するのが正しいのか検証する必要があるというものだ。

特に「再犯の危険性」「被害者及び参考人危害の恐れ」を「考慮すべき事項」ではなく、証拠隠滅及び逃亡の恐れ、住居不定のような拘束事由として明文化されなければならない――という要請が多い。

国会の同意を得て刑事訴訟法を改正しなければならない事案だ。警察は一線の声を反映して国会を説得し、法改正を積極的に検討する必要がある。

今回の事件をきっかけに、ストーカーは被害者危害の恐れが高く、重大犯罪につながりかねない、ということが証明された。法の弱点が補完されずして、ストーカーによる報復犯罪は防ぐことができるだろうか。

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