
韓国政府が少子化対策として実施している所得税の減免措置は効果が限定的で、直接的な財政支援の方が実効性が高い――こんな分析が示された。所得税の減免は特定層への恩恵に偏る一方で、現金給付はより直接的に家計負担を軽減できるという指摘だ。
19日に発表された韓国国会予算政策処の報告書「結婚・出産・育児に関する税制支援の現状と改正動向」によると、韓国の所得税実効税率は子どもの有無にかかわらず、経済協力開発機構(OECD)平均よりも低い水準にとどまっている。
現在、韓国では育児手当や出産手当について月20万ウォン(約2万2000円)を上限に非課税措置が取られているほか、育児休業給付金や手当も非課税対象となっている。さらに扶養子女1人あたり150万ウォン(約16万5000円)の所得控除や教育費の15%税額控除など、税制を活用した少子化対策が実施されている。
しかし、OECD諸国の平均では、子どもの有無による所得税実効税率の差は約5ポイントあるのに対し、韓国ではわずか1.7ポイントに過ぎないという。OECD加盟38カ国の中で、韓国の子どもがいない世帯の実効税率は34位、2人の子どもを持つひとり親世帯の実効税率は30位と、もともと税率が低い水準にある。
特に若年層に関しては所得税率自体が低いため、税制優遇の恩恵を受けにくいとの指摘もある。
報告書は「少子化対策の対象となる20〜30代夫婦は他の世代に比べて実効税率が低く、免税者の割合も高いため、所得税制による追加支援の効果は限定的になり得る」と分析している。また、所得税制の特性上、支援が必要な低所得層よりも高所得層に有利に働く可能性もある。
一方、現金給付による財政支援は、育児負担が実質的に大きい層を直接的に支援できるため、政策目標の達成に効果的だと報告書は指摘する。少子化対策の核心は、家計が実感できる実質的な支援であり、所得税の減免よりも児童手当の拡充など現金給付の強化が必要だという。
主要先進国でも、少子化対策として現金給付を強化する動きが目立つ。フランスやドイツは育児手当や保育支援を拡充し、スウェーデンやフィンランドは児童手当を主要な政策手段として活用している。これらの国では、現金給付が出生率の上昇や育児負担の軽減に肯定的な影響を与えていると評価されている。
実際、2019年時点でOECD加盟国における家族関連の公的支出はGDP比2.29%が平均だが、韓国は1.56%にとどまり、38カ国中32位という低水準に甘んじている。
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