
「6歳の子が保護施設に来たことがありました。体には色の違うあざがいくつもありました。前のあざが消えきらないうちに新しいあざができていたのです」
韓国の全国学童虐待被害児童シェルター協議会の事務局長であるチャン・ダヘ氏(40)は、過去に自らがシェルターで働いていた際に出会った痛ましいケースを振り返った。
5月5日の「子どもの日」。祝われるべき日にもかかわらず、今も家庭内で虐待を受け、心身に深い傷を負う子どもたちが後を絶たない。虐待が通報され、保護者との分離が必要と判断された場合、子どもはすぐに「学童虐待被害児童シェルター」に保護される。
虐待の加害者は多くの場合「親」であり、子どもたちは複雑な感情を抱えながら保護施設での生活を始める。韓国保健福祉省の2023年統計によると、児童虐待の加害者は親が85.9%(2万2106件)を占め、代理養育者が7.3%、その他の人物が3.3%となっている。
「保護施設は子どもにとって見知らぬ環境であり、加害者である親に対しては恐怖と愛情が入り混じった“アンビバレントな感情”を抱えている。殴られた相手だから怖いけれど、知らない施設での生活はもっと不安なのです」
チャン氏はこう解説する。
虐待は身体的・認知的発達にも深刻な影響を及ぼす。チャン氏は「同年代と比べて体や心の成長が遅れている子が多く、本当に胸が痛い」と話した。
全国学童虐待被害児童シェルター協議会は、全国に152カ所あるシェルター施設の子どもやスタッフを支援する団体だ。チャン氏はこの施設を「119番の救急室のような場所」と表現する。実際、虐待を受けた子どもを緊急に受け入れる場として24時間体制で稼働している。
「特に通報が多く入るのは夜間です。週末や祝日、家族が集まる時間帯に虐待が起きているのではないかと思うこともあります」
施設では基本3~9カ月の保護期間が設けられているが、必要に応じて延長も可能だ。入所可能な子どもの年齢は0歳から19歳までで、1施設あたり最大7人まで受け入れることができる。
最も大切なのは「日常の回復」だという。「温かいご飯、清潔な服、安全な住環境。この“当たり前”を保障することが何より大事なのです」。チャン氏はこう訴える。施設には社会福祉士や臨床治療スタッフも常駐し、子どもたちの心身のケアにあたる。

◇特別な記憶
特に「子どもの日」には、虐待を受けた子どもたちに特別な記憶を残そうと、職員たちは工夫を凝らす。遊園地への外出、特別な食事、プレゼントの配布……。
施設から元の家庭に戻る子どもも少なくない。だが、戻った後に再び虐待が繰り返されるケースもあるという。「施設を出た後の子どもへのアフターケアが必要であり、親にも“親になるための教育”が不可欠だ」。これは多くの専門家が共通して指摘する重要な課題だという。
一方で、施設運営には多くの課題もある。24時間体制であるにもかかわらず、職員が時間外手当など正当な報酬を得にくい現状がある。「6人のスタッフが勤務する施設でも、限られた予算内で人件費をまかなわなければならず、超過勤務手当が計上しづらい構造だ」。チャン氏はこう吐露する。
また、地価の高いソウルでは、適切なシェルター用物件を確保するのも困難だ。住居要件を満たす物件が少なく、仮にマンションに設置した場合、騒音問題など新たな課題も生じるという。
チャン氏は今年、事務局長となり、現場からは一歩退いた。ただ、回復した子どもたちとの思い出は今も心に残っているという。
「小学生だったけれど、読み書きができない子がいました。言語療法や学習支援を通じて、それができるようになった時のあの感動は忘れられません」
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