
韓国の有名ベーカリーブランド「ロンドンベーグルミュージアム」で勤務していた20代男性社員が、週に80時間近く働いた後に突然死したとの疑惑が浮上し、雇用労働省が特別監督に乗り出した。
死亡した男性は今年7月、勤務先が提供する宿舎で心停止の状態で発見された。死の直前1週間で80時間以上勤務していたとされ、医療関係者は「過労と睡眠不足」が主なリスク要因だった可能性が高いと指摘している。
雇用労働省は10月29日から、ロンドンベーグルミュージアム仁川店と運営会社である本社「LBM」に対する労働監督に着手。故人の労働時間だけでなく、全従業員の勤務・休暇状況や賃金未払いの有無などを調査し、違反が確認されれば他の店舗にも監督を拡大する。
職業環境医学の専門家であるムン・ジニョン漢陽大学教授は「単発のストレスよりも危険なのは、回復のないまま持続する緊張状態だ。睡眠不足と自律神経の乱れが重なると、急性心停止につながるリスクが非常に高まる」と警鐘を鳴らす。
長時間労働と睡眠不足は、単なる「疲れ」ではなく、自律神経系、心血管系、内分泌系を総崩れに追い込むプロセスだ。緊張状態が休息なく続くと、交感神経が常に活性化し、副交感神経の安定作用が抑制され、心拍数や血圧の上昇、血管収縮、ストレスホルモンの過剰分泌といった変化が生じる。これらが慢性的に続くと、心血管疾患のリスクは着実に高まる。
特に、飲食業やサービス業に従事する労働者は、立ちっぱなしの勤務が多く、血液循環が悪化しやすい。下肢から心臓への血流が減少し、筋肉の緊張によって乳酸などの疲労物質が蓄積される。こうした状態が続けば、運動後も血圧が高止まりし、心臓への負担が蓄積する。
さらに、ストレスの持続はエネルギー代謝にも影響を与える。インスリンの作用が鈍化し、空腹時血糖が上昇。甘いものや炭水化物を多く摂取するようになり、中性脂肪の増加を招く。結果的に高脂血症やメタボリックシンドロームのリスクも高まり、心筋への酸素供給が制限されることで急性心筋梗塞に至る恐れがある。
免疫機能の低下も見逃せない。長時間労働が続くと免疫細胞の活動が鈍り、感染症にかかりやすくなる。睡眠不足の影響で回復も遅れ、重症化や合併症のリスクも増す。
問題なのは、こうした体内の異変が自覚しにくいことだ。軽いめまいや睡眠障害、疲労感が続く段階では、すでに交感神経が慢性的に緊張状態にある可能性が高い。頭痛や胸痛、食欲不振、不眠などが2つ以上繰り返される場合、専門的な診察を受けるべきだ。とりわけ30歳未満の若年層では、急死の前兆が目立たないため、単なる疲労と誤認されやすい。
ムン・ジニョン教授は「無症状のまま突然の失神や心停止に至るケースもあり、予兆を捉えることが難しい。出退勤の記録や生体リズムの変化を見える化し、健康相談などの仕組みを整備する必要がある」と強調した。
今回の事例は、若年労働者の命を奪うほどの過労の実態を象徴しており、今後の制度的な見直しと労働環境の抜本的改善が求められている。【news1 キム・ギュビン記者】
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