2025 年 6月 16日 (月)
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「今さら外見なんて…」を覆したい [KWレポート] 韓国コスメで挑む“おじさん卒業” (1)

2024年10月17日、韓国京畿道高陽市のKINTEXで開催された「2024 K-ビューティーエキスポコリア」(c)news1

韓国コスメが世界を席巻している。だが美容に無頓着な中年男性は、その価値をほとんど理解できていない。一方で、しわとシミを放置しながら年齢を重ねていくことには、小さな抵抗感もある。そんな中年男性が「韓国コスメの敷居」を跨ごうとすると、どうなるのか。ある男性の体験に同行した。【KOREA WAVE編集長 西岡省二】

◇K-カルチャーとともに急成長

「一般」という言葉が正しいかどうかわからないが、一般の中年男性から見れば、「コスメ」は遠い存在だ。そもそも「顔を手入れする」という発想はあまりない。何より、顔の手入れよりも、時間を費やしたいことがたくさんある。「いまさら外見にこだわってどうする」というあきらめの気持ちも強い。

一方で、自分たちの知らない世界で、韓国コスメは着実に存在感を高めている。K-ドラマや映画、K-POPなどK-カルチャーの浸透に伴って、化粧品・ビューティーケア製品も普及し、2024年には米国向け輸出で初めてフランスを上回った。

いったい、韓国コスメの何が良いというのか――。

筆者は2025年4月上旬、東京・銀座にある「銀座メンズサロンMATHIS(マティス)」を訪ねた。男性専用のエステティックサロンだ。韓国コスメを使った男性エステメニューがあると聞き、ここでの韓国コスメによる施術を取材することにした。

今回、体験してもらったのは、筆者が新聞記者だったころの同僚で、毎日新聞外信部副部長の米村耕一さん(52)。記者は勤務時間が不規則で人付き合いにおけるストレスが多く、肌のケアまで気が回るような人は多くない。特に国際報道に関わる米村さんの仕事は過酷だ。

コスメに縁遠い存在――こう思えたからだ。

その米村さんは韓国コスメによってどう変化するのか。それともしないのか。

カウンセリングを前に肌に関する必要事項を記入する米村耕一さん(c)KOREA WAVE

◇「キメの細かい肌」とは

MATHISでわれわれを迎え入れたのは、ここのオーナーでエステティシャンの重信聡美さん。美容業18年、エステは14年のキャリアだ。米ニューヨークでヘアメイクを学び、その後、エステティシャンに転じた。「銀座SALON MATHIS」は2018年の開業だ。現在、男性美容オンラインスクール「improve」の代表も務めている。

カウンセリングからスタートした。

「何か美容とかしていますか?」。こう問われた米村さんは、ひと呼吸おいて口を開いた。

「基本的にしていません。ローションを使ったり使わなかったり……」

肌のチェックから始まった。米村さんの右手首の内側にマイクロスコープが当てられ、その状態がモニター画面に大きく映し出された。

(左)米村さんの右手首の内側にマイクロスコープを当てられる(右)モニター画面に映し出された皮膚の表面。皮溝が網の目のように交差して皮丘を構成している(c)KOREA WAVE

皮膚の表面は、大小の細かい溝(皮溝)が網の目のように交差している。それに囲まれて四角形・三角形・ひし形のようになっている箇所が「皮丘(ひきゅう)」と呼ばれる。皮溝と皮丘の形が鮮明で、水分が十分に保たれている状態が「キメの細かい肌」と表現されている。

右手首内側の写真を指し示しながら、重信さんは次のように解説した。

「これが米村さんが持っている本来のキメです。この部分は洋服で守られているので、温存されています。しっかりしたキメですね」

同様に頬の皮膚の様子がモニター画面に大きく映し出された。米村さんは表情をこわばらせた。

(左)米村さんの右頬にマイクロスコープを当てられる(右)モニター画面に映し出された皮膚の表面(c)KOREA WAVE

「かなり違いますね。うーん、これは相当にガサガサ感がある」

画面を見ながら、重信さんがコメントした。

「気になるのが乾燥、シミ、しわですね。ガサガサ感だったり、ちょっと赤味があったりします。角質がたまり、水分と油分がうまく温存できなくなっています」

ここで重信さんが口にしたのが「肌のターンオーバー」という言葉。皮膚が新しく生まれ変わる仕組みを指す。

表皮は、角質層・顆粒層・有棘層・基底層で構成される。基底層で新しい表皮細胞が生まれ、徐々に押し上げられて角質細胞となる。古くなった角質細胞は、垢やフケとして剥がれ落ちる。正常な肌の場合、ターンオーバーの周期は、皮膚の場所によって異なるものの、おおむね4週間(28日間)といわれる。

ただ、乾燥、ストレス、紫外線、加齢、手入れ不足などにより、ターンオーバーが乱れると、この角質が剥がれ落ちたり落ちなかったりする。正常なターンオーバーが難しくなり、透明感や弾力が失われる。

これが「トラブル肌」だ。

肌のターンオーバーの仕組み=銀座SALON MATHIS提供(c)KOREA WAVE

◇洗っているのに汚れている

次に重信さんがスコープを当てたのは鼻だ。モニター画面には、黒ずみと毛もはっきり映し出された。

「でも毛はしょうがないのでは?」。米村さんが思わずこう口にすると、重信さんは「間引いていくことで、だんだん目立たなくすることができます」と返した。

黒ずんでいるものの正体とは――。

「皮脂ですね。タンパク質の汚れも混じっています。それらが酸化して黒ずんでいるのです」

次は右の頬の付近にスコープを当てる。「シミができています」

肌にシミができる最大の要因が紫外線だ。強すぎる洗顔や、シェービングによる摩擦の繰り返しもシミ(色素沈着)を引き起こす。米村さんはひげがやや濃く、剃り過ぎて、炎症も起こしているようだ。伸び切ったまゆ毛も気になる。

人の顔は、斜め45度のラインがきれいであれば、「ああ、すごく若々しい」という印象になるそうだ。

「頬のなかでも、光が当たる高い部分のヒゲを取り、まゆ毛を少しカットしてブローリフト(まゆ毛パーマ)して整えて切る。シミを薄くしていくだけでも、すごく若々しい印象になります」。こう勧められ、米村さんは力なく「なるほど」とつぶやいた。

一連のトラブルを、韓国コスメを使ってどう解決していくか。カウンセリングは次の段階に移る。

(つづく)

(c)KOREA WAVE

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