
米国が過去に中国や欧州連合(EU)に対して実際の関税発動まで踏み込んだ通商法301条が、今回「クーパン問題」と絡んで再び取り沙汰されている。中国・EUの事例のように、調査開始そのものが強力な圧力として機能してきただけに、今回の事案は韓国政府の通商リスク管理能力を測る試金石になり得るとの見方が出ている。
韓国政府は、クーパンに対する対応は特定企業を狙い撃ちした措置ではなく、法と原則に基づく同一基準の執行だという立場を明確にしている。ただし、米通商代表部(USTR)が調査開始の是非を判断するまでの45日間という「政治的タイムライン」が動き出したことで、今後の展開次第では事案の性格が変わり得るとの観測もある。
クーパンの株式を保有する米投資会社のグリーンオークとアルティミターは、韓国政府がクーパンを差別的に扱い、韓米自由貿易協定(FTA)に違反したとして、通商法301条に基づく調査および貿易救済措置をUSTRに要請した。両社は同時に、韓米FTA上の公正・衡平待遇義務および非差別原則違反を主張し、国際投資紛争(ISDS)の前段階である仲裁意向書(noticeofintent)を提出するなど、全方位的な圧力に踏み切った。
投資会社側は、昨年発生した大規模な個人情報流出事故を受け、韓国当局が政府横断で強度の高い対応に乗り出し、その過程で労働・金融・関税など、個人情報問題と直接の関連が薄い分野にまで圧力が拡大したと主張している。その結果、数十億ドル規模の投資価値が毀損され、実際にクーパンの株価が情報流出の公表後に大きく下落した点も根拠として挙げている。
通商法301条は、外国政府の政策や慣行が米国の貿易を制限したり不公正だと判断された場合、関税や輸入制限などの報復措置を認める、米国通商法上でも最も強力な手段の一つだ。
代表的な事例は中国である。米国は2018年、中国による技術移転の強要や知的財産権侵害を問題視して301条調査を開始し、その後、数千億ドル規模の中国製品に高率関税を課し、米中貿易戦争へと発展した。
EUも例外ではなかった。米国はフランスなどEU諸国のデジタル税導入を問題に301条調査を進め、関税発動の可能性をてこに政策修正を迫った。また、エアバスへの補助金を巡る紛争では、301条手続きを通じてEU産航空機や農産物に実際に報復関税を課した前例もある。
通商専門家は「301条は調査開始だけでも強い外交・通商メッセージになる」とし、「相手国にとって管理すべきリスク自体が大きく拡大する」と指摘する。特に、自国第一主義を掲げるトランプ政権のUSTRが国内企業保護の名分でこれを活用した場合、事案は個別企業問題を超え、韓米通商全体の摩擦へと広がる可能性も否定できない。
韓国貿易協会通商研究室長のチョ・ソンデ氏は「米国政府側にも韓国政府の立場や状況説明は十分に伝わっているとみられる」とし、「今後の米国内での検討過程や政治的判断によって事案の性格が変わり得るだけに、対応策を整える必要がある」と語った。
韓国は中国やEUと異なり、301条に基づく本格的な報復措置を受けた前例はない。韓米FTA体制や戦略的同盟関係を踏まえれば、韓国を対象に301条が実際に発動される可能性は低いと見られてきた。ただ、鉄鋼や自動車、為替問題などを巡って、301条の検討や圧力カードが言及されたことは繰り返しあり、今回のクーパン事案は投資家自身が通商法手続きを直接動かした点で性質が異なるとの分析もある。
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