2024 年 7月 27日 (土)
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「やむを得ず運転するのであって…」 [KWレポート] 韓国・高齢ドライバーの本音 (2)

京畿道平沢のある村の住民。免許を返納した運転者はいない(c)MONEYTODAY

「周りから肥料を買いに行こう、農薬を買いに行こう、と言われて仕方がない」

韓国西部・京畿道(キョンギド)平沢(ピョンテク)に住むイ・デホンさん(80)は、本格的な農作業シーズンを控え、トラックを運転する時間が大幅に増えた。

農作業に必要な品を買いに近くの市場までバスに乗ると、乗っている時間だけで往復2時間近くかかるが、トラックを運転すれば往復20分余りで済む。買い物を終えて帰る時間まで合わせても1時間で十分だ。

バスを待って道端で過ごす時間を考えると、運転をあきらめることはできない。

イさんだけではない。村住民の大部分が似たような考えだ。

平沢では、満65歳以上の高齢ドライバーが運転免許を自主返納すれば、10万ウォン(1ウォン=約0.1円)相当の地域商品券を支給するとしている。だが、ある地域では、返納した住民は1人もいない。村の公民館で会った住民たちは、高齢ドライバー免許返納制度について「農村では不可能な制度だ」と口をそろえた。

このため、制度の実効性を高めるためには、工夫が必要だ。地域別、職種別に多様な条件に合わせた対策を準備してこそ、高齢ドライバーの事故問題を解決できるということだ。

◇自主返納率毎年2%

現在、韓国政府と地方自治体が実施している高齢ドライバー免許返納制度で、自主返納率は毎年2%にとどまっている。農・漁村地域では返納率がさらに下がる。

農・漁村地域で高齢者の返納率が特に低い理由は「車なしでは事実上生活が不可能だ」という点につきる。農業をするためには1日に数回田畑を行き来しなければならず、肥料や堆肥がなくなれば村の市場に行く必要がある。1袋20キロの肥料を買って、バスやタクシーに乗るのも難しい。

イ・デホン氏は「畑に行けば、サツマイモやジャガイモを掘って持ち帰らなければならない。でも、バスに乗ってどうやって物を運ぶのか。田んぼまでトラクターや耕運機を運ぶのにもトラックが必要だ。免許を返却しろということは、農業をするな、と言うようなものだ」と話した。

村の責任者も「今はもう背負子(しょいこ)で運ぶ時代でもない。車なしで肥料、農薬、堆肥を運ぶことができるのか」と話した。村で若い部類に入るパク・インスクさん(66)は「免許がないと仕事ができないので、返却はできない」と主張する。

病院に行くのも容易ではない。

イ・ジェハさん(83)は「94歳の叔母を連れてバスに乗るには15分歩かねばならず、途中で3回は休む必要がある」と話した。チャ・グンジャさん(77)は「田舎では車がないと友人が死んでも葬式に行けない。年を取ると膝が痛くてバスに乗ることも難しい」と訴える。

◇公共型タクシー

自治体でもこのような点を考慮して多様な代案を出している。

例えば、平沢市の場合、特定の56カ所の住民を対象に公共型1000ウォンタクシーを運行している。月曜日から土曜日までの午前9時~午後5時に、呼び出し方式で1人当たり片道2回(往復1回)に限って利用できる。

だが「運転」に代わるには依然、十分ではない。

運転免許を返納しないからといって、高齢ドライバーが運転を続けることを負担に思わないわけではない。

住民のキムさんは「ますます運転するのが不安になり、夜に運転はしないようにしている。平沢市内やソウル市内には出ず、気をつけて運転をしている」と話した。また別の住民は「やむを得ず運転するのであって、年を取っても運転が好きな人は、どれくらいいるだろうか」と吐露する。

(つづく)

(c)MONEYTODAY

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